冷蔵庫の中身はなんでしょう?
「ふー、おなかいっぱい。ご馳走さま」
『満足してもらえたみたいでよかったわ』
「本当に料理出来るんだね、意外だったよ。笑」
『意外は余計!』
「はは。でも本当に。こんなに美味いビーフシチューを食ったのはじめて。完全に胃袋つかまれたな。笑」
『愛がこもってるからね』
「あーあ。俺にもこんな彼女がいたらな、、、って、あ!!ごめん!俺ビーフシチューこぼしてんじゃん!うわ、絨毯にシミついてるし、本当ごめん!ふくものある?」
『全然いいよ、気にしないで』
「でもこれまだ新品じゃないの?ふかふかだし、、」
『でも、安物だから。本当に気にしないで!どうせいつかは汚れるものなんだから。ね?』
「んー、、、ごめんね。次新しいの買うとき言って!プレゼントするから!」
『そんなに気にしなくていいのに』
「あ、じゃあせめて後片付けは俺にさせてよ!俺の気も収まらないしさ」
『うーん、、じゃあお言葉に甘えて、一緒に片付けよっか!』
「おーまかせろ!俺昔キッチンでバイトしてたから皿洗うのだけは上手いんだ」
『本当かなー?』
「本当だってば!例えば包丁を洗うときは、、、て、あれ?この包丁結構年期入ってんね。」
『古いわけじゃないんだけど、硬いものを切っていたら傷んじゃて』
「ふーん。ん?これ冷蔵庫だよね?なんでビニールかぶせてんの?」
『匂いが漏れちゃうのよ』
「におい?キムチでも作ってんの?笑」
『違う。腐ってるのよ。肉が』
「なにそれ、もしかして死体でも入ってたりして笑」
『そうよ?』
「なにその冗談、こえーわ。笑」
『冗談のつもりはないけど?』
「いやいやいや、こんな小さい冷蔵庫に人が入る訳ないじやん」
『バラバラにして入れてるに決まってるじゃない』
「え、、?真顔で変な冗談いうなよ」
『だから冗談じゃないよ』
「、、、、、、、どうやって?」
『だから、この包丁でバラバラに切り分けたのよ。』
「硬いものって、、、骨?」
『そう。特に骨盤を砕く作業は苦労したわ』
「いや、もうやめない、、、?」
『今少しだけ本当に死体入ってるかもって思ったでしょ?笑』
「、、、、、、、っんなんだよ、もうー!怖いじゃんやめてよ。ちょっとだけ焦ったじゃん!笑」
『冷蔵庫の中、みたい?」
「え、、?いやいや。もし、仮に、死体が本当だったとして、誰の死体が入ってんの?」
『彼氏』
「なんで殺す必要があるんだよ」
『好きだからよ。好きだから、ずっと側にいて欲しいって思ったの。私の中にいて欲しいって。』
「意味がわかんないよ」
『そんなにおかしいかしら?』
「どうやって殺したって言うんだよ」
『部屋の真ん中でね、彼の手足を縛って、右胸に包丁を刺したの。人って思っていた以上に柔らかいのね。歯応えの無い沢庵みたいだったわ。なんだか実感が無くて、何度も何度も刺したの。思ってたより血は吹き出なかったけどマグマみたいにゆっくりと沢山流れてね。フローリングの溝に入っちゃって、掃除しても取れなくなっちゃった』
「だから、、、絨毯?」
『そうなのよ。で、このままじゃ彼が腐っちゃうと思ったから冷蔵庫に入れようと思ったんだけど、入らないからバラしたの。すっごく時間がかかったわ。でもいざ切っちゃうとね。彼が彼じゃなくなったというか、何なのかすらわかんなくなって。でも微かにまだ彼の匂いだけが残ってて。不思議な感覚よ、彼であって彼ではないそれって。今となっては面影すらないけどね』
「改めてよくわからない。仮にこの話が本当だとして、何故俺に?」
『あなたが聞くから答えているだけよ。別に隠しても無いし、晒してもない。あなたが聞いたのよ?」
「、、確かにそうだな」
『冷蔵庫、あけたい?』
「いや、嘘に決まってる」
『もしも本当だったらどうする?』
「え、、、、、いやいや、ないない!」
『ビーフシチュー。美味しかった?』
「え?」
『私の中に、あなたの中にいてほしいなって思ったの』
「おい、、、うそだろ、、、?」
『洗い物はもういいから、寝室に行かない?』
「いや、ちょっと待ってくれ」
『待てない。彼があなたの中にいる内に、一つになりたいの』
「おい、来るな!」
『冷蔵庫の中見てみたい?それとも、
冷蔵庫の中、入りたい?』
「やめろーーーー!!!!!!」
これもSMプレイと呼べるのだろうか。